活用事例

2022-02-02_event

(左 JR東日本スタートアップ株式会社 吉田 知史様/右 MODE, Inc. CEO 上田 学)

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JR東日本スタートアップ株式会社
営業推進部 アソシエイト

吉田 知史 様

鉄道建設工事での『unknown』を無くして生産性と安全性の向上を目指す

JR東日本スタートアップ株式会社様はJR東日本グループのコーポレートベンチャーキャピタルです。「“超”事業共創型」をテーマにJR東日本グループの駅、車両だけではなく、ホテル、駅ナカ、施設系、メンテナンス系などの様々なアセットを提供しながら、ベンチャー企業と一緒に未来を作る新たなビジネスを創造していくことを目標にしています。

今回MODEが採択されたのは、JR東日本スタートアップ株式会社様が2017年から行っているJR東日本スタートアッププログラムで、一般的にはアクセラレーションプログラムと呼ばれるものです。

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(JR東日本スタートアップ株式会社 吉田 知史様)

2022年2月2日(水)に開催した「MODE BizStack新製品発表会」にて、JR東日本スタートアップ株式会社 吉田 知史様にMODEと共同で実施している鉄道建設工事でのPoCについてお話しいただきました。

吉田様は2021年4月から現職となり、それまではJR東日本の建設部門において業務の変革全般をミッションとして、スタートアップ企業との協業をメンターの立場で行ったり、BIM/CIM(ビムシム)やICT技術などの導入を担当されていました。

鉄道建設工事特有の課題をベンチャー企業と解決したい

吉田様:まず、鉄道建設工事の特徴を簡単にご紹介したいと思います。大きく4つの特徴があります。

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1点目の特徴は線路に近接したところでの工事が多いことです。日々運行している営業運転中のすぐ脇で工事を行うことが多く、列車やお客さまの安全の確保が求められます。

2点目の特徴は夜間そして短時間の工事が多いことです。例えば山手線や京浜東北線の終電列車と始発電車の時間間隔は3、4時間しかありません。その時間の中で電気を止める手続きや列車を侵入させない手続きをとると、実質の作業時間は2、3時間しか取れません。このような短時間かつ、列車が止まっている夜間に集中して行う必要がある工事があるという特徴があります。

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3点目の特徴は狭隘・狭小区間での作業が多いことです。実はお客さまが利用する駅のホームの下で工事を行う場合もあります。日々の列車運行を行いながら工事を行う必要があるので、ホームの下の非常に狭くて窮屈な場所での工事となり、作業効率は非常に悪くなってしまいます。

4点目の特徴は大規模な切換工事があることです。日々の夜間、短時間ではできないような、列車を止めて一気に作業を行うような大規模の切換工事が年に数回程度行われます。2021年10月の渋谷駅の改良工事はメディアでも多く取り上げられ、目にした方も多いと思います。

鉄道建設工事にはこのような特徴や特有の条件があるので、JR東日本の建設部門ではスマートプロジェクトマネジメントの一環として、JRE-BIMということでBIM/CIMの導入や最新のICT技術の導入を積極的に行っています。コスト削減や工期短縮、そして生産性や安全性の向上を目指して、クラウドの導入やBIMモデルを用いた施工計画の策定を行なっています。さらなる課題解決をスタートアップ企業と一緒にやりたいという中で、今年スタートアッププログラムにご応募いただいたMODEとPoCを行っています。

『unknown』をなくしたい!をテーマに工事のデジタルツイン化を目指す

吉田様:MODEとのPoCでは「工事現場から『unknown』をなくしたい!」をテーマに、徹底した現場のデータ取得に取り組んでいます。

2022年1月から3月にかけて行なっている首都圏の駅改良工事でのPoCについて紹介します。駅と一言言っても400〜500m、またはそれ以上の非常に広い範囲で行う工事では、誰が・何がどこにあるのかという全体の把握が難しくなります。まずはそのような工事のデジタルツイン化を目指して以下の3つを行っています。

  • 工事関係者・軌陸車のリアルタイム位置情報把握
  • 工事関係者の活動状況・バイタル相関分析
  • 鉄道工事で使用する保安機器の状況把握
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位置情報把握のために既存の準天頂衛星対応のGPSトラッカーを作業員や軌陸車と呼ばれるレールを走行できるトラックに積んでトラッキングしています。また、作業員のバイタルを測定する計測パッチやセンサーにより、どの範囲に誰がいるのかや作業員の歩数や脈拍を計測しています。また、鉄道工事の安全を守るための保安機器の設置・撤去忘れが課題としてあるので、「設置した/しない」をビーコンセンサー等を使って検知しています。

これらの情報把握やバイタルの取得において、MODEの強みである複数のセンサーを統合して可視化できることを活かし、現場の平面図に誰がどこにいるかを表示させようとしています。また、単にデータを取って見える化して終わりではなく、データを分析して改善に繋げていくことを目指しています。その第一歩として今回の実証実験を行っています。

今後工事現場に様々なデジタル技術や機器を導入する中で、それらの効果を目に見えるようにすることも求められます。新しい技術を導入したことで何が変わったのか、さらに改善できる点はどこなのかを知ることが必要で、このようなPDCAサイクルをMODEと一緒に回していくことを目指しています。

MODEが鉄道建設工事の課題を解決できることに期待

「MODE BizStack新製品発表会」では吉田様とMODE, Inc. CEOの上田のトークセッションも行いました。

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上田:なぜ今回MODEを採択していただいたのでしょうか?

吉田様:鉄道建設工事と一言に言っても、同じ条件で工事を行うことはなく、工事ごとに一品生産のような形で行います。このように条件が多様な中でIoT機器を利用する場合に、全現場に共通の機器を導入することはなかなか難しく、どうしても現場ごとに適用させる必要があり、コストも開発時間も大きくなります。工事の条件によって必要なセンサーは違ってくると思いますので、多様なセンサーを繋げられるMODEのプラットフォームに非常に期待しています。

上田:鉄道建設工事でのIoTやDX活用にどんな効果を期待していますか?

吉田様:鉄道建設工事特有の条件がいろいろある中で、最も優先すべきは安全の確保です。現在、工事の最終安全確認は人の目で行なっているため、確認の時間がどうしても必要になります。例えば、夜間工事の2、3時間のうちの20分を安全確認に使っているものを現場DXで見える化することによって確認時間が5分でも10分でも縮まれば、その分作業時間を長く取れます。そのわずかな時間も夜間工事では貴重で、それが積み重なってプロジェクト全体の工期短縮に繋がるのではと期待しています。

上田:MODE BizStackで各工事を相対的に評価できることにはどんな意味がありますか?

吉田様:夜間工事とメンテナンス系の作業を合わせると一晩に約100件以上の作業が首都圏エリアで行われています。そんな中で事故や事象が起きて初めてその現場の危険性やルールから外れた作業を行ったことが明らかになることがあります。MODE BizStackで工事全体の見える化と相対的な評価をすることで、事前に現場の危険性を把握して、事故や事象を未然に防ぐことができるのではという期待があります。

吉田様、ご登壇いただきありがとうございました。MODEは引き続きご支援やご協力をさせていただきます。

※掲載内容は発表会当時のものです。