BizStack導入の裏側。リコーが語る電池交換不要な自社センサーへの自信と顧客との接点拡大

Ricoh
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社名 株式会社リコー
業種 電機・精密機器製造業
利用サービス BizStack
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💡IoTビジネス開発 💡データ可視化 💡遠隔監視 💡ベンチャー共創 💡業務効率化 💡センサーメーカー

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  • 手元の端末での遠隔監視や可視化、リアルタイムのアラート機能など、お客様への提供価値を向上すること。
  • 上記サービスをいち早く実現するためのクラウド環境を実現すること。
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  • クラウドとゲートウェイの両方を提供できるようになったことでお客様の規模に関わらず支援できるようになり、自社センサーに対する自信が増した。
  • 取引件数はサービス開始前と比較して約2倍に増加した。
  • センサーだけでは達成できなかった新たなDXの枠組みを構築するといった幅広い取り組みが進められている。

オフィス向け画像機器を中心としたサービス・ソリューション、プロダクションプリンティング、産業用製品などを提供する株式会社リコー。現在、同社リコーフューチャーズビジネスユニット(以下BU)では、その技術を生かしIoTセンサーを開発し、BizStackと連携させることで新規サービスの展開を図っています。株式会社リコー リコーフューチャーズBU エネルギーハーベスティング事業センター価値創造グループの三澤様、村野様にお話を伺いました。

リコーの新規事業育成部門が手がけるIoTビジネス


2021年4月から、株式会社リコーはデジタルサービスへの事業構造の転換と資本収益性の向上を目指してカンパニー制を導入しています。その一環として、リコーフューチャーズBUは新規事業の育成を担当し、イノベーションを通じて社会課題を解決する事業を展開しています。

エネルギーハーベスティング事業では、“充電のない世界”を目指して、コピー機で培った有機感光体(OPC)の材料技術を活用した次世代太陽電池を開発し、センサー事業を立ち上げ、電池交換レスおよび配線レスのIoTセンサーを提供しています。

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手前左からRICOH EH CO2センサーD101、RICOH EH 環境センサーD202、D201

自立型発電により電池交換が不要な製品を実現しています。「低消費電力という点では他に負けない技術だと思います。」と三澤様は話します。「電力の使い方を工夫して電力量を抑えているので、固体型色素増感太陽電池が発電し続ける限り、電池交換がいらないのです。」と村野様は続けます。

これらのセンサーは電源の配線が不要で、電池交換の必要もないため、数十個、数百個と設置する際の電源工事、設置後の電池交換作業の手間を大幅に削減します。「室内光レベルの光があれば、電池交換を意識せず使用できる。これがリコーのセンサーの大きな強みです。」と村野様。

リコーの既存顧客に加え、新規顧客からのセンサー導入が増えており、センサー事業は好調です。また、「リコーのDX」の一環として、グループ会社含めたリコー社内での認知度も高まっているとのことです。

お客様のニーズを満たすためにはクラウド化は“必須”


BizStackの導入前、リコーはお客様が所有しているAndroid端末やWindowsにデータを蓄積していました。そのため、お客様がデータ活用のための環境を構築する必要がありましたが、自社で環境構築を行うお客様はほとんどいませんでした。当時はクラウドによる遠隔監視や可視化、リアルタイムのアラート機能は提供ができておらず、お客様のご要望に十分にお応えすることができていない状態でした。「お客様自身が所属される部門単独で独自のクラウドシステムを組むことは困難で、センサーを十分に活用できていないと感じていました。」と三澤様。

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株式会社リコー リコーフューチャーズBU 
EnergyHarvesting事業センター 価値創造グループ グループリーダー
三澤 太輔 様

リコー自身がDXを推進している以上、クラウドの利便性は理解していましたが、スピードや制約の観点から、自部門でゼロからの開発は現実的でないと判断しました。また、外部ベンダーが提供するPaaSやBIツールを活用したクラウド環境構築も考慮に入れていましたが、十分なサービスを提供できるレベルに至りませんでした。そこで、自社センサーの独自の技術を生かしながら、スピードとオープンイノベーションを重視してクラウドの部分は社外連携を進める方向にシフトしました。「十分にセキュアなゲートウェイを探さないといけない。システムも作らないといけない。保守、サービスも考えないといけない。何重にも壁がある中でスピード感を持って進める必要がありました。」と村野様。

リコーフューチャーズBUでは、「戦略的パートナーとの共創」を価値創出の手段と捉えており、お客様に喜ばれるならば、新進気鋭のベンチャーであるMODEと提携することにもためらいはありませんでした。「新しいことに取り組んでいる以上、早く市場に出す必要があると考えています。リコーフューチャーズとMODEが協力すれば、より良い製品を素早く市場に投入できると感じています。」と村野様は語ります。

BizStack採用の理由


リコーがBizStackを採用した決定的な要素は、クラウドだけでなくゲートウェイも提供されている点でした。他のサービスも評価されましたが、クラウドとゲートウェイの両方を提供しているものは少なく、またアラート機能が十分でないものが多かったそうです。BizStackではメールアラートの設定が容易で、お客様に提供する品質としても問題ないと判断し、採用に至りました。「初めてMODEのゲートウェイを使用した時、わずか数分で繋がりました。その時の衝撃は今でも覚えています。」と三澤様は語ります。

MODEと組むことで製品に自信が持てるようになった


村野様は、BizStackの導入によって、リコーとお客様との接触が増えたと振り返ります。オンプレミス前提のセンサー販売から、BizStackを使用したクラウド前提のサービス拡大により、取引件数はサービス開始前と比較して約2倍に増加しました。「BizStackを導入することで、ゲートウェイからクラウドまでを提供でき、お客様の規模に関わらず支援できるようになりました。」と三澤様も話します。また、クラウドへの接続ができるようになったことで、リコーのセンサーに対する自信が増したとも述べています。「センサーの強みとクラウドの便利さを組み合わせることで、製品に自信を持ってアピールできるようになりました。」と村野様は明かします。

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株式会社リコー リコーフューチャーズBU 
EnergyHarvesting事業センター 価値創造グループ
村野 亮太 様

お客様における導入効果として特に注目すべきは食品加工現場での温湿度管理の事例です。2021年6月1日から義務付けられたHACCP※に対応するため、食品加工現場では1日3回の温度記録が必要となりました。しかし、記録のために加工室に入るための着替えなどに時間がかかり、1回あたり約25分を要していました。また、手書きでの記録によるミスの可能性もあります。しかし、リコーの環境センサーとBizStackの導入により、現場に行かずとも手元のPCやスマホから温湿度確認ができるようになったので、温度確認のための入室・記録時間が1日に40分短縮され、年間で163時間の削減が達成できました。さらに、異常時のアラート機能や、常時データがクラウドに保存されることで、お客様の従業員に安心感を提供できる効果もありました。

※HACCP Hazard Analysis and Critical Control Point 「危害要因分析重要管理点」

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さらに、IoTの新たなフレームワークとしてロボットによるIoT設備点検事例など、センサーだけでは達成できなかった新たなDXの枠組みを構築するといった幅広い取り組みが進められています。

村野様はリコーの環境センサーについて「日々の温湿度チェックが必要な方や、チェックに必要なリソースが不足している方にこそ、我々のサービスを利用してほしい」と語っています。また、三澤様は「エネルギーハーベスティング事業は環境負荷軽減を大義としています。今後は公共機関・教育機関にもご提案できればと考えています。」と語ります。

お客様への新しい価値提供へ


リコーフューチャーズBUでは、温湿度やCO2などの環境情報だけでなく、これまでとは異なる新たな別のデータをセンシングするデバイスや新たな通信方式を搭載したデバイスの開発を進めています。三澤様はこのように結びました。「顧客接点が拡大することによって、様々なご要望を頂くようになりました。これらのセンサーとのデータ連携や得られるデータの範囲を拡大することで、お客様の業務改善や効率化、利益創出に貢献できる活動や共創を続けていくことを目指しています。」

■RICOH EH 環境センサーD201/D202
https://industry.ricoh.com/dye-sensitized-solar-cell/sensor

■RICOH EH CO2センサーD101
https://industry.ricoh.com/dye-sensitized-solar-cell/co2sensor

※掲載内容はインタビュー当時(2023年6月)のものです。

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