事例インタビュー

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株式会社センサーズ・アンド・ワークス
代表取締役
堀江 聡
 

混雑緩和を目的とした人流可視化サービスをプロジェクト化

センサーズ・アンド・ワークス様は兵庫県のセンサーデバイス開発スタートアップ企業で、人流計測に特化したセンサーの開発を行っています。今回は、代表取締役の堀江様にお話を伺いました。

2020年に発生した新型コロナウイルスは、人と人との接触により感染が拡大するとされています。センサーズ・アンド・ワークス様とMODEは感染症予防の観点から、混雑緩和を目的とした人流可視化サービスをプロジェクト化し、その仕組みを構築いたしました。2021年2月現在、兵庫県神戸市にある大型商業施設umie(ウミエ)で実証実験を行っています。

人流計測に特化したセンサー

- 貴社について教えてください。

10年前に創業し、特に赤外線を使ったセンシングに特化したビジネスを続けてきました。

創業当初は、センサーのデバイスを販売するビジネス展開を図っていこうとしました。しかし昨今のIoTの流れから、デバイス単体での販売から、人を検知するセンサーモジュールの開発、さらにそれをゲートウェイやクラウドに連携してサービス提供する形にシフトしてきました。現状では、人を検知した情報の可視化や、情報を分析・解析してレポーティングするところが主な業務となっています。

- 貴社のセンサーについて教えてください。

弊社の商品は、人体が放射する赤外光を検知して、人をトラッキングする仕組みを採用しています。この方式は消費電力が小さいので電池駆動のType-Bには最適です。IoTをサービスとして提供するにあたり一番ネックになるのは施工や設置場所制限です。電池駆動にすることで設置制約の自由度を上げるのと、どこでも簡単に誰でも付けられるというのが究極のコンセプト。

と言っても全てが電池駆動というわけではありません。Type-Eという商品群はAC電源を必要とし、そこに何人いるかだけでなく、どういう経路で人が移動したかや、人の快適度といった状態判定、つまり人の全身の熱分布を取り、今その空間で、温冷感として快適と思っているか不快と思っているか、そういった情報を取ることができます。付加価値に応じたカテゴリー分けをして、弊社の特徴を出しています。

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umieでの人流可視化サービスプロジェクト

- 貴社の人流可視化サービスとMODEとの繋がりは?

MODEさんとは3年前くらいから評価をさせていただいております。その中で、手を変え品を変え開発を進めていく中で、直近でやっているのがumieのプロジェクトです。2020年の夏頃、MODEさんと混雑可視化サービスをしようよと話があったのがきっかけです。umieのいくつかの店舗に人流センサーを置いて、各店舗の混雑状況を一元的に可視化するという社会実験をやらせて頂いています。その中で、MODEのゲートウェイを使ってデータをクラウド側にアップリンクする仕組みを使っております。

- 人流可視化サービスの反響はいかがですか?

今回のプロジェクトのきっかけとして一番大きいのは、社会情勢がガラッと変わった点です。三密を避けたり、人がどこにいてどのくらい集まっているかなどに関して、行政も含め非常にナーバスになっています。そこで混雑可視化サービス自体に付加価値が出てきたのは、我々にとって非常に追い風であると感じています。従来のニーズはイベントが多く、それも集客度の増減といった情報程度で、エンドユーザーさんがその情報をなかなか使いこなせず、情報をレポーティングするだけで終わってしまうようなケースも多々ありました。

しかし、コロナ禍における混雑可視化で一番大きく問われるのはリアルタイム性です。「今」どうなのかというリアルタイムのデータ収集と、それを多くのステークホルダーに、的確に発信・共有すること。さらにそこにクラウドが必要になってきます。弊社の人流検知のセンサーの仕組みとMODEのリアルタイムでのデータ収集・データ供給・共有のプラットフォームの組み合わせが、特に大規模な、付加価値の高い人流計測では求められています。その部分で現状、高いニーズがあり、今年に関しても引き続きそのニーズに応えていこうと弊社の方では努力しているところです。

時間帯別混雑可視化イメージ

- 人流可視化サービスを採用するメリットは他にありますか?

従来からの「人数の把握」を自動化したいという要望も出てきています。これまでは人力で人数計測していましたが、弊社のセンサーを使うと自動でできるようになります。そうすると人を雇わなくて済むため、人件費も削減できます。さらに新しいエクスペリエンスも生まれてきます。従来、人数計測するのは基本的に繁忙期だけですが、こうしたセンサーとクラウドを使うと年がら年中、自動的に計測できます。そうなると今まで分かっていなかった、実際の来客推移や来客状況のデータが収集され明らかになります。そこに新しい気づきや、新しいビジネスアップデートに繋がるチャンスが生まれるのです。

- プロジェクト構築時の課題を教えてください。

よく『IoTは総合格闘技』と言われるのですが、要はハードでもソフトでも、どちらかしか分かっていない人はダメなんです。弊社の人流データをインフラ化して行くという将来展望を実現していく上では、オールラウンドに俯瞰的に仕事ができる人材をもっと増やしていかないと、と感じています。ソフトの面では、システムインテグレートの部分も、トラブルシュートもできる必要があります。MODEのゲートウェイを経由してWebサイトで見えているデータが、どういうデータに対してどういう加工をして、混雑を可視化するかも理解した上で、的確に指示ができないといけません。

ハードの面では、センサーのレイアウトやゲートウェイの設置場所など、現場的なアプローチも当然ながら必要だし、実際に施工する技術も必要です。実際にゲートウェイの設置から開通まで時間がかかることもあるし、アプリの開発会社さんとやりとりでも、意思疎通に時間がかかることもあります。そういったところと連携する上でのコミュニケーションをちゃんと取っていく必要があるところでのIoTの難しさと、そういったリソースの拡充が必要という課題を感じています。

- 『IoTは総合格闘技』という脈略から見たパートナーとしてのMODEはどう見えていますか?

現場ニーズに応えていただけているのは心強いです。今回、ラズパイ(Raspberry Pi)ベースのゲートウェイを開発していただいたのは大きいですね。もともとのゲートウェイからラズパイになったことで、比較的ハンドリングしやすく、調達もしやすい、加工もしやすい、なおかつコストも安い。そういったところのパフォーマンスには非常に助けられています。

- MODEの導入によって得られると考えていたメリットで最も明確だったのは何でしたか?

一番大きかったのはシステムインテグレーションの管理をしなくて良かった点です。ゲートウェイの管理はしないとなりませんが、うちの方で、どこかのデベロッパーのクラウドを利用して、そこに繋ぎ込んで、データベースの管理であるとか、データベースのキャパシティや負荷を考えながらサーバーの運用をするだとか、色々と考えながらやっています。が、少ない社員で回していくとなると、案件が増えてくるとなかなかしんどくなってきます。今後のことを考えると、うちはセンサーの開発、製造、販売、取り付けというところが事業の中心なので、そこは他社さんに任せることができません。自社のビジネスへ集中特化するという意味では、システムインテグレーション部分をサポートしていただけるのは、うちにとっては一番大きいです。

Win-Winの関係でビジネスができるのがMODEという会社

- 実際にMODEを導入したメリットはありますか?

お客様、弊社、MODEのいずれもWin-Winの関係でビジネスができる点だと思います。

MODEはハードウェア販売で多大な収益をあげるビジネスモデルではないと思っています。我々としてもシステムインテグレーションそのものに対する課金をお客様に負荷として与えるのではなく、センサーを使って頂くことによるサービスで収益を上げていくモデルです。ゲートウェイというハードウェアに関して、なるべく低コストでかつある程度信頼性のおけるものをずっと追求していました。

従来まではメーカーから買うしかありませんでしたが、umieのプロジェクトに使ったゲートウェイは弊社で製造できるものです。我々自身で調達してきた部品でできるので、コストを抑えることができるのは大きく、しかも従来と変わらない安定性が得られるというのも本当にメリットとして感じています。初リリースなので、どこかのタイミングで止まってしまわないかという不安はありました。実証実験と言えどもデータが止まるのは嫌なのでよく見ていましたが、今のところ特に問題なく動作しているようです。実証実験はまだ終わっては居ませんが、その点では成功かなと考えています。

- MODE以外で貴社のセンサー活用事例はありますか?

現在は、神戸の三宮で人流計測が使われています。Type-Bは1日300カウントで約3年電池が持ちますが、人通りの多い場所では半年に一回くらい電池交換する場所もあります。三宮は人通りが多いのでソーラーパネルと充電池の組み合わせでランニングしているところもあり、この方式ではまる一年くらい何もしなくてもずっとランニングできています。非常に手軽に設置ができ、取り付け場所を選ばないので、まさにスマートシティ向けのセンサーといえます。

- 貴社の今後の展望をお聞かせください。

人流のプラットフォーム化の案件をもっと増やしたいですね。国内外を問わずMODEとご一緒できる機会を増やして行きたいと考えています。

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