事例インタビュー

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株式会社アシックス
事業推進統括部
坂本 賢志
 

IoTデータが取れるだけじゃ無い。
フィードフォワードを想定していたのはMODEだけでした。

株式会社アシックス様は70年余の歴史の中で培ってきたスポーツを核とした事業領域をベースに、中長期的な目標として「デジタルドリブンカンパニー」となることを発表しました。デジタルを軸にサービスを強化することで、顧客にスポーツ体験を通した新たな価値を提供することを目指しています。

時代の変化を見据えるアシックス様が現在取り組んでいるのが、スポーツデータ総合システム「TUNEGRID(チューングリッド)」です。TUNEGRIDはスポーツ競技や運動の記録を、簡単に記録・分析できるシステムで、アシックス様が開発を推進しています。

新しいサービスの開発でのクラウド活用が決定したという背景から、「MODEプラットフォーム」をご依頼いただきました。

今回は、MODEのIoTサービスについて事業推進統括部 坂本賢志さんにお話をうかがいました。

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IoTを活用したシステム構築を目指す

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TUNEGRID-Cube

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シューズ業界では、シューズにセンサを内蔵しIoT化するという考えが以前からあり、過去には他社メーカーもセンサ内蔵型シューズを販売したことがあったそうです。その他社商品は、スマートフォンとペアリングして歩数などをデータ収集し、クラウド上にデータ蓄積するものでした。ただアシックス様では、スマートフォンを持っていることが前提だと、成立しないシーンが多くあると考えていました。

「スマートフォンを持って出かけない人は、世の中にワンサカいます。例えば、高齢者や小学生。あるいは、スマートフォンを持ってはいけないケースというのもあります。部活中の学生や機密情報を扱う場所や、製造現場で働く人たち。ところがそういう人たちも靴を履いて服を着てますよね。ということは、靴にセンサと発信器が入っていれば、その人の運動量が取れたり、居場所が分かったりといったことができるようになります。」(坂本さん)

シューズから直接、街のインフラに対してデータが飛べば、高齢者の見守りなどができるようになります。この発想から、靴の中にセンサと発信器を入れるのを目指すように なったそうです。

こうしてアシックス様が独自開発したのが、シューズに内蔵する小型BLEセンサ「TUNEGRID-Cube」です。重さ約5グラムで、主に歩数を計測できるほか、着用者の位置情報を取得することも可能です。

「これを靴の上の所に入れるんです。靴底ではなくてね。紐を結んだ時に、蝶々結びが足に当たって痛くなるのを防ぐための柔らかい部材なんですけど、この中にポケットがあってスコッと入れるという仕組みです。」(坂本さん)

非常に簡便な構造にしたのはコストダウンのためでした。スマートフォンを持たない人でも確実にデータを発信するためには、安く販売して世の中に広げないとならない。そのためにはコストを抑えることが非常に重要だと認識していたそうです。

TUNEGRIDの活用事例

シューズからのデータはどのように活用できるのでしょうか?アシックス様が考えるTUNEGRIDの活用事例をいくつかご紹介いただきました。

都市マネジメント

小学校での利用シーンで自治体がデータ活用をする場合、A小学校とB小学校の児童の歩数を比較することで、児童の運動量が分析できます。さらに、A小学校の校区には大きな公園が3つあるから児童の運動量は多いが、B小学校の校区には小さな公園が1つしかないから児童の運動量も少ない、なのでB小学校の校区に大きな公園をつくればB小学校の児童の運動量も増えるのではないか。こんなふうに歩数データが都市マネジメントに活用できます。

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子供の見守りや運動量を計測できる

人員の最適化

工場での利用シーンで、ある程度データを収集し、作業量と歩数の関係性が見えてきた場合、データに基づく人員配置の最適化が可能となります。例えば、閑散期と繁忙期で生産量が半分になる場合、人件費が高い作業員と安い作業員を組み合わせてもその生産量を保てることが分かれば、単純に人員を半分に減らすのではなく、データに基づく人員最適化が実現できます。結果として、トータルの人件費を下げられます。

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(左)作業者と受信機、(右)スマートフォンの画面例

災害時の避難

現場で働いていると、スマートフォンを持っていないことが少なくありません。作業中に被災した場合、作業員は何の通信手段も持たずに避難することになります。

災害時にはモバイルバッテリでゲートウェイに給電することで、ゲートウェイを避難経路に持ち出せば、作業員の避難状況が分かるソリューションにもなります。作業員の家族などにも情報を開示できれば、家族の居場所を見つける手がかりとして使うこともできます。

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ワーカー向けのTUNEGRID-WORKSの画面例

データを活用した試合戦略

スポーツでの活用事例として、過去の試合における歩数と時間のデータを取得・活用することで、試合の戦略を組むことができます。過去のデータから歩数の波形を分析し、相手チームの傾向からどのメンバーをどこで使えば良いかを割り出せます。

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競技データを集計し、プレイスタイルを分析する

フィードバックではなくフィードフォワード

上述のデータを活用したゲーム戦略の活用事例は、特に坂本さんのご経験が強く反映されているようでした。

坂本さんは6年前までバスケットシューズなどの屋内球技用シューズの開発をされていました。その中で、スポーツの世界において求められているのはフィードバックではなくフィードフォワード、つまり未来に向けた解決策だと感じたそうです。

「シュートを15本したけど2本しか決まらんかったから負けました、みたいなフィードバックの情報は正直いらないんですよ。こういうプレイスタイルの強豪チームと戦う時、その勝ち方の戦略をデータとして示せるフィードフォワードの情報を出してあげる必要性があるんです。」(坂本さん)

坂本さんは、バスケットシューズの開発も同じ着想で行われていました。まず、様々なデータ波形を取得した上で、この波形になるにはこういうシューズが必要だと分析した上で、製品作りに入るそうです。一般的な「このシューズならこの波形になる」というフィードバック型の順序とは全く逆です。

「あなたがこんなプレーをしたいならあなたに合う靴はこれですよ。何故ならあなたが考えるプレーをしたらこんな波形になるはずで、この波形の動作をし易いように作っている靴ですもん。とアシックスだったら言い切れるんですよ。」(坂本さん)

例えばバレーボールのトップ選手でも、その選手のプレーの特徴に合うシューズに変えるだけで、最高到達点が4~5cmも高くなることもあるそうです。合わないシューズを履き続けることで、多くの子供たちが自分の本来のパフォーマンスを出し切れていません。

「自分にぴったりの靴を履けば、長く競技できるんだとか上手く競技できるんだっていうのを、本当は僕が一校一校行って部活で言いたいくらいなんですけど、それができないので、その役目としてTUNEGRIDには期待しています。」(坂本さん)

MODEを選んだ理由

開発を進めるにあたり、いくつかIoT業者を比較検討した上で選定したそうです。それでは、なぜMODEを選んでいただけたのでしょうか?

フィードフォワードの考え方が合致した

「最初からフィードフォワードのことを想定して話されたのがMODEだけだったんですよね。IoT技術を使ってデータが取れますよ、だけじゃなくて、IoT技術を使ってフィードフォワードの取り組みができる。他のところとは違うMODEの強みはそこですよ。それをより精度を上げるためにデータを収集するシステムがあるんですよ、と明確に打ち出されていたんです。」(坂本さん)

IoT技術を使ってデータを取り、その結果をフィードバックするソリューションが多い中、MODEだけは過去の知見からデータを活用し、スポーツでの戦略や事故防止のための情報をフィードフォワードできると提案した点が高評価だったそうです。

どんなに素晴らしい技術を持ったIT企業であっても、そもそも歩いている方向が異なる企業が、そのすごい技術を使う方向性が違っていたら、それはあまり意味のないことだと考えたそうで、フィードフォワードの考え方が合致していたMODEを選んでいただきました。

安定的にIoTを可能にするシステムが揃っていた

「TUNEGRIDのグリッドは、タイムグリッドのグリッドなんです。正確には時間軸はTimelineとかTimebaseという英語になるのでしょうけど、時間の刻みを想定していると言いたいんですよ。時間が紐づいた情報というところが価値があるっていうのがそもそもの考え方なので。だからMODEの時系列データは親和性があるソリューションだと思いました。」(坂本さん)

都市のあらゆる人が履いている靴からデータを収集できれば、将来的にはビッグデータを活用したビジネスが始まることになります。その時、安定してデータ収集できるインフラとして、強力なIoTデータ収集システムが必要です。さらにビッグデータを高速で集計する必要もあります。

MODEの時系列データベースは、24時間365日絶えずデータ収集するIoTシステムに特化したデータベースなので、ビッグデータを想定したアシックス様のニーズにフィットするソリューションだと感じたそうです。

やりたいことの実現のため包括的に対応してくれた

「ITの世界にいる人にしたら当たり前でも、ITとは全く無縁の世界に住んでいる我々からすれば訳が分からず『こうしてください』さえも言えないんですよ。MODEだとそれを全部キャッチしてくれるので、悪い意味ではなく、使い勝手が良いというのが一番良かったですね。」(坂本さん)

これまでにも、既存のお客様からニーズや課題が数多く寄せられていたそうで、それを実現させるにはどうしたら良いか、ずっと考えていたそうです。しかしIT企業へ相談しても「ここ以外はうちの領域ではないから」と回答されてしまい、包括的に対応してくれるサービスがなかなか見つからなかったそうです。そこで、株式会社神戸デジタル・ラボ様の紹介でMODEにご相談いただきました。

MODEでは、本格的なコネクテッドビジネスを実現するためのオール・イン・ワン・パッケージソリューションを提供しています。IoTプラットフォームの他、デバイス・センサーからクラウドアプリケーションまで包括的にカバーしています。

「例えばIT企業に相談しても『クラウドサービスは準備しますがゲートウェイは御社でご用意ください』という話になるでしょ。我々みたいにITに縁遠い業界にとっては、MODEは非常に強力なパートナーになりうると感じますね。」(坂本さん)

終わりに

長年、スポーツ用品のトップメーカーとして靴を研究し続けたアシックス様は、履いている靴のタイプや歩数によって、その人のパーソナリティが分かるほどの研究ノウハウを持っているそうです。これまでアナログに積み重ねられた研究ノウハウに、IoTで得られる大量のビッグデータが掛け算されることで、大変なビジネスインパクトが生まれる可能性があります。TUNEGRIDにはその可能性が秘められているのです。

MODEソリューションを活用したTUNEGRIDは、2021年6月に本格展開されます。将来に向けてデジタルドリブンカンパニーを目指す株式会社アシックス様を、MODEは今後も引き続き支援してまいります。